株式会社 M'S会計事務所
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お陰様で、相続税の申告依頼が途切れること無く入ってきています。
その中で、私が遺言を執行したものもあります。
人が亡くなると大変です。亡くなった方は、もちろん大変だったと思いますが、その家族、いわゆる相続人の方々もすごく大変です。そのあたりを少しづつお話したいと思います。
お葬式が終わり、一定の期間が過ぎますと、そろそろ遺産の相続手続きをしよう、という事になります。遺言があって、遺言執行人が決まっていれば、その方にまかせればいいと思います。
しかし、遺言が無い場合、まず、どこに何があるか?から探さなくてはいけません。
金庫の中、仏壇の中、押入れの布団の下、等とりあえず有りそうな所を探します。故人から生前に重要な物はここにあると教えてもらっておけば良いのですが、なかなかそういう場合ばかりではありません。年金手帳、預金通帳、証券会社からの通知、生命保険の証書、土地建物の権利書等、見つけ出すのは結構大変な作業になります。
遺産がほぼ見つかったとしましょう。さあ、ここからが大変です。見つかった遺産を相続人の間で遺産分割協議をしなくてはいけません。誰がどの遺産を取得するか決めていくわけです。すんなり協議が整う場合もありますが、もめる事もあります。
もめた場合は、手続きがそこから前に進みません。まあ、ゆっくりやって下さい、ということになります。もう私の出る幕ではなく、弁護士さんのお仕事となります。
ここがまず第一の高いハードルです。
私はこのようなトラブルを未然に防ぐ意味で財産をそれなりにお持ちの方は遺言、特に公正証書遺言を作成されることをお勧め致します。
私は何回か、このもめたケースにでくわしたことがありますが、これはもう骨肉の争いと世間ではよく言いますが、まさにそういうことになります。この場合、喧嘩をするのがいやでそのまま放置する人、または、裁判で争って白黒の決着をつける人とがいます。
前者の場合はそこで手続きが止まってしまいます。そのまま何十年と時が過ぎていきます。もうどうにもなりません。相続税もなんら特典が得られません。私は、出来れば、後者をお勧め致します。お金も掛かるし、いやな思いもするでしょうけど、子や孫の代のことまで考えると、やはりここで決着をつけておくべきだと思います。
最近は、このもめたケースにめったにでくわさないので、ホッとしています。
まあ、なんだかんだで遺産の分割が出来たとしましょう。
そこから、第2の高いハードルが待ち構えています。
遺産分割協議が整い、分割協議書ができましたら、相続人全員がそれに自書、押印(実印)します。それで、勝手に遺産が相続人の方々の名義に変わる訳ではありません。
社会保険事務所、銀行、証券会社、郵便局、農協、生保会社、損保会社、法務局、等など、それぞれの機関がそれぞれ勝手なことを言います。それぞれすべて違う書式の申請書があります。それらの書類を取りに行き、家に帰って記入し、また窓口に行って申請手続きをします。どこに何を書けばいいのかよく分かりません。
一回で済めばいいですが、なかなかそうは行きません。どこか記入間違いや印鑑の漏れ、または添付書類の不備があったりします。そうすると、また行かなければいけなくなります。
10の機関に申請するとして、20往復から30往復することとなります。
名義変更の申請に際してそれぞれの機関がまたいろいろな添付書類を要求します。遺言書または遺産分割協議書、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、相続人の印鑑証明はまず、基本中の基本ですが、死亡診断書や相続人の運転免許証、住民票等が必要になってくる場合もあります。これもまた、機関によっていろいろです。
これらの書類も役所等に行って取り寄せなければなりません。何通必要かわかりません。
足りなくなれば、また行って取り寄せることになります。費用も馬鹿になりません。
これらの一連の大変な作業を誰がするんでしょう?年老いた故人の妻または夫がするんですか? 遠く(例えば、東京など)に出て行って、サラリーマンをしている息子ですか? 嫁に出した娘ですか?
実は、これらの作業を誰もする人がいないといったケースが多々あるのです。
私は、遺言執行人をしてみて思ったのですが、これらの作業は非常に煩雑で難しいです。判断能力や身体能力の落ちたお年寄りにはまず無理であると言っていいでしょう。
なおかつ、今、個人情報保護だとか、本人確認法だとかで他人が代理でこれらの作業をしようと思っても、なかなか高い障害が設けられています。そういう意味でも、遺言を作成し、遺言執行人を決めておけば、遺言執行人は当事者ですから、比較的こういう作業はスムーズに運ぶと思います。
これら、一連の作業の結果、やっといろいろな財産の名義が相続人に変わりました。ほっと一息と思うのも束の間、今度は税務署から相続税の申告書が送られてきます。
税務署は生前の故人の所得税の申告状況などから、故人の財産の状況を大まかに把握しています。相続税を申告する必要があるのではないか、と思われる場合は、申告書が自動的に送られてきます。申告書が送られてこなかったら「やった!!見つかってない。ラッキー」と思わないでください。
故人の遺産が相続税の基礎控除額を超えている場合は、申告書の郵送の有無に関わらず申告義務があります。申告義務のある方は、申告書の郵送が無くても、必ず申告して下さい。申告期限内に申告すれば、税法上のいろいろな特典が受けられますし、無申告が後になってバレた場合は、税務署の方にこっぴどくお叱りを受けます。
さあ、やっと我々税理士の出番です。
相続人の方々は、ここでも税理士から、いろいろな書類を要求されます。預貯金、借入金等の残高証明書、株式等の所有数証明書、相続時の参考価格表、固定資産税の評価証明書、土地等の測量図、生命保険金、損害保険金の明細書、退職金の明細書、葬式費用の領収書等、枚挙に暇がありません。また、金融機関や役所に出向かなければいけません。これらの書類を集めるのにも、又以前に言ったような煩雑な手続きが必要になってきます。
このように、遺産の分割手続きと相続税の申告手続きを分けてやると二度手間になる事が多いので、これらを同時並行してやるのが一般的です。従って、相続開始当初から税理士にご相談されることをお勧めいたします。
相続税の申告期限は原則として相続開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日となります。わかりやすく言いますと亡くなった日の10か月後の応答日と言うことになります。この日までに相続税の申告を済ませ、納税を完了させなければなりません。納税は現金で一時に納付するのが原則です。
相続財産の中で現金とか預貯金がいっぱいあって、納付が容易な場合は問題ないのですが、相続財産のほとんどが土地といった場合は困ります。納税が出来ません。
さあ、どうしましょう?
こういう時のために、税法では現物で納める「物納」、分割払いで納める「延納」と言う納付の方法が用意されています。しかし、これらの方法はかなりハードルが高く、すんなりとは認めてくれません。
私はこういう場合は、いろんな条件をクリアしなければいけませんが、できれば、その相続で取得した土地のうち、適当なものをお売りになって、その売却代金で納税することをお勧めしています。
これにはいろいろ理由がありますが、「物納」は難しいし、「延納」は借金と同じだし・・・土地売却で不要な土地が無くなり、固定資産税も安くなり、納税ができるのですから・・・
しかも、土地売却の所得税も軽減されます。この方法が一番だと思っています。
相続税の申告も終わり、納税も済み、一件落着です。やれやれです。もうこれで平穏な日常生活に戻っています。
しかし、最後の高いハードルが待ち構えていることがあります。その日は突然やってきます。・・・・・税務調査です。
その日は大体、相続税の申告書を提出してから1~2年目にやってきます。しかし、その期間が過ぎたからといって安心しないで下さい。3~5年後にやってきたケースもあります。
通常は事前に「○月○日から調査に入りますよ」と言う連絡が相続人の方と税理士の双方に入ります。しかし、稀にこの事前連絡なしの飛び込みの調査があります。
以前、私が関与した中で、80歳ぐらいのおばあちゃんの所へ朝9時頃、屈強な調査官が二人突然現れて、あれやこれや調べだし、腰を抜かして私のところへ連絡してこられたといったことがありました。
まあ、ともあれ、このようにして、招かざる客との戦いの火ぶたが切って落とされるわけです。
この税務調査は通常1か月程度で終わりますが、たまに何か月にも及ぶ場合もあります。それぞれの事案の内容によります。
税務当局は、質問検査権がありますから、調査に入る前に、事前に銀行や郵便局、証券会社といった所に反面調査に入り資料を入手している場合もあります。納税者側が全て正直に言うことばかりではないからでしょう。
調査の中で、故人の両親のこと、出生地、生い立ち、学歴、生前の職業、趣味、死亡原因、家族のこと、ありとあらゆることを聞いてきます。そういったことの話のなかで課税漏れになっているものはないか?と調べていきます。家族、孫がいれば孫の通帳までみせてほしいと言います。家の中、金庫とか押入れとかいろいろな場所を見ていきます。
私の経験のなかで、課税が漏れているのは、現金預金の場合と生前の贈与が実は贈与ではなく名義借りではないかという場合のこの2つのケースがほとんどです。
預貯金は隠してもバレますので隠さないようにしましょう。生前に配偶者、子または孫などに贈与している場合はそれが本当に贈与しているのか、単に名義を借りているだけなのかよく考えましょう。
この税務調査でなにも問題がなければ、そのままその申告は是認ということになります。もしこの調査で課税漏れになっている財産が見つかりますと、通常修正申告ということになります。そして追加の相続税を納めることとなります。
それには過少申告加算税とか悪質な仮装隠蔽があった場合は重加算税とか余分な税金が付いてきます。残念ですが仕方がありません。
まあともあれ、これで調査は終了です。これで、本当にやれやれです。
私がこの文章の中で言いたかったことは、それなりに財産をお持ちの方は遺言を作成して下さいということです。
また親が財産をお持ちの方は、その親に遺言を作ることを勧めて下さいということです。いろんなトラブルが未然に防げます。
そしてその遺言の執行人には、できれば税理士がよいのではありませんか、と言うことです。遺言の作成段階から相談されれば相続税額の試算もできます。
そして何より言いたかったことは、その遺言執行人に適任の人がいない場合には、私にご相談下さいということです。よろしくお願いします。